2012.06.15(金)

報告

中大規模木造建築物に関する課題の整理(情報追加)

 木のまち・木のいえ推進フォーラムでは中大規模木造建築ワーキンググループを設置し、今後増加すると考えられる中大規模木造建築物に関する課題を洗い出し、それらを整理して具体的な対策につなげる情報を提供することを目的として活動を行いました。
 以下は、今までの幹事会やリレーフォーラムで示された幹事からの意見を、中大規模木造建築物の課題をテーマに抽出整理したものです。抽出に当たっては、以下のⅠ)からⅩⅡ)の項目別に行いました。各項目の後に、幹事から「中大規模木造建築物の推進に関する課題や推進方策に関する意見」と「進んでいる検討・プロジェクトなどの最新の情報」を続けて掲載しています。
 
  Ⅰ) 構造                            
  Ⅱ) 防・耐火                     
  Ⅲ) 耐久性・維持管理       
  Ⅳ) 省エネルギー             
  Ⅴ) 防音・遮音
  Ⅵ) 調達・流通                  
  Ⅶ) 木材の品質                  
  Ⅷ) 技術者の育成              
  Ⅸ) 発注                            
  Ⅹ) コスト                          
  ⅩⅠ) ニーズ                     
  ⅩⅡ) 地域環境                  


Ⅰ) 構造

 (1)木材の構造上の特性を生かした設計方法を用意する必要がある。
 (2)木材の構造上の特性を生かすには、他の構造と異なり、限界の設計ではなく、大胆にたっぷり使うという発想の転換も必要である。
 (3)開発時に構造・防火等の性能割のみで考えると、建設時のコストに合わなくなる。トータルのバランスを考える必要がある。
 (4)構造や防火等の法規制(各種設置基準含む)には、根拠を現在の技術等に合わせて再検討するべきものもあるのではないか。
 (5)法規制の中には、運用上の解釈によって混乱が生じているものもあり、それらを整備することが必要である。
 (6)これから技術の開発が必要な木造においては、民間の様々な努力を活性化する必要があり、それには旧38条の大臣認定に似た仕組みが有効なのではないか。
 (7)混構造、伝統系含め、木造の構造設計は煩雑でわかりにくい面が多く、技術的に詰める必要がある部分もある。これらの整備が必要である。
 (8)開発や構造設計方法の整備においては、一般流通材を利用した普及に考慮した工法とする等、ターゲットを明確にする必要がある。

★中大規模木造建築物の推進に関する課題や推進方策に関する意見
【今村幹事】
・中大規模木造の建築物はどうしても大断面集成材が構造主体になりがちになる。集成材に限定することなく、中小工務店でも参画できるように、現状の在来軸組み製材で建築が可能な工法にも手法を広げることが望まれる。例えば、大きなスパンを飛ばすことが無くても可能な建築工法、混構造、大断面製材の利用、等の可能性を検討して欲しい。
 
【中村幹事】
・④について:構造や防火等の法規制(各種設置基準含む)には、根拠を現在の技術等に合わせて再検討するべきものもあるのではないか。これと並行して昭和26年に施行された条文、例えば①木造建築の3,000㎡の上限、②学校は2階建てまで、③幼稚園の教室は1階に、④特別養護老人ホームは1階建て(③、④は文科省、厚労省の設置基準)などがあり、これらを性能に基づいた基準に改められないか検討すべきである。公共建築に木造建築を増加させる障害となっている。
・⑤について:これから技術の開発が必要な木造においては、民間の様々な努力を活性化する必要があり、それには旧38条の大臣認定に似た仕組みが有効なのではないか。 
設計の工夫が建築文化を進化させてきた。しかし、平成12年基準法改正以降規制を強めた結果、新たな工夫を行う余地を失ってしまっている。旧38条の復活を強く望みたい。
 
【藤澤幹事】
・中大規模建物のイメージが漠然としている。中規模市場としての具体的な建物と空間イメージを明確にし、そのための取り組み、課題について検討することが必要である。例えば、保育所、老人ホームなどの空間を実現するための横架材、柱などの部材開発。しかも構造計算上、扱いやすい木質部材の開発、接合方法(金物等を含む)の開発などが考えられる。
 
【矢野幹事(代理:熊木住協専務)】
・現在の仕組みでは、新たに挑戦する、技術や開発に対して否定的である。新しい形の旧38条の仕組みの検討や、開発を行政が後押しするような姿勢をお願いしたい。
・3階建て以下の低層建築物にあっては、軒高さ9m、高さ13m超により、構造計算適合性判定(適判)の審査対象とされる。低層の木造建築物にあっても、層間変形角、剛性率等のルート2の構造計算が求められるが、特に木造建築物にあっては、ルート2の計算は一般的な計算方法と考えられ、適判対象建築物から除外すべきである。現状では、適判を回避することを理由に、無理やり軒高さ9m以下とする計画としているケースがあり、耐久性の観点からは逆行する計画と考える。  

★進んでいる検討・プロジェクトなどの最新の情報
【中村幹事】
・木造ラーメン構法の開発を2009年に終え、現在は実用の段階に入っている。木造住宅、システム住宅などへの適応を現在行っていて、被災地の復興住宅への提案を復興エコハウジングとして行っている。この木造ラーメン構法は元来、6m~8mスパンを対象として開発されたもので、学校施設等に適しているが、まだ公共建築への応用は出来ていない。
このような木造構法の開発が今後様々に行われることが、木造都市化への動きとなる。今後さらに多くの開発が民間から行われることが必要である。 


Ⅱ) 防・耐火
 (1)開発時に構造・防火等の性能割のみで考えると、建設時のコストに合わなくなる。トータルのバランスを考える必要がある。
 (2)構造や防火等の法規制(各種設置基準含む)には、根拠を現在の技術等に合わせて再検討するべきものもあるのではないか。
 (3)法規制の中には、運用上の解釈によって混乱が生じているものもあり、それらを整備する必要がある。
 (4)これから技術の開発が必要な木造においては、民間の様々な努力を活性化する必要があり、それには旧38条の大臣認定に似た仕組みが有効なのではないか。
 (5)混構造、伝統系含め、木造の構造設計は煩雑でわかりにくい面が多く、技術的に詰める必要がある部分もある。これらを整備する必要がある。

★中大規模木造建築物の推進に関する課題や推進方策に関する意見
【今村幹事】
・防耐火設計については記述内容が一般には分り難く、よく理解している技術者が少ないのではないかと想像される。床、壁部など部分的に仕様規定を示したような基準等があればもっと分りやすく、利用普及しやすくなると思われる。
・鉄骨に木材被覆した柱・梁、木の構造体に石膏ボードを被覆したものでは、「木」本来のイメージから離れる印象がもたれ、もっと木を現しで使える仕様が望まれる。木で耐火構造にするのか、あるいは、鉄と木の組み合わせで、かつ、木を現しで使える手法を開発するのかなどが検討課題となる。ただ、コストの面も重要な検討課題である。
・構造部分以外でも外壁などで木を使う上で基準が曖昧な部分が多い。耐火建築物の外壁に木を貼れないなど延焼の基準も曖昧である。例えば、木材を使うなら不燃木材(薬剤による不燃処理)が要求されるケースもあるが、要求性能が明確でない。これまで建物外装に木を使うことを主体的に検討してこなかったため、建物内では内装制限の基準は整備されているが、外装(外部ルーバー、カーテンウォールなど)には曖昧な点が多く整備が必要である。躯体も重要であるが、建物外装に木を見せて使うことも今後の木材利用の展開の上では大切であり、この点にもっと注力すべきではないか。
・防火上の制限で木材使用が支障となっている領域(例えば、屋上デッキ・歩道・廊下、等)で、要求性能等の曖昧な点を整備する必要ある。
 
【藤澤幹事】
・建物に対する防火、耐火の概念と火災に対する予防、消火の計画、設備、システム、避難などとの連携策をとりこむ必要がある。
 
【矢野幹事(代理:熊木住協専務)】
・現在の仕組みでは、新たに挑戦する、技術や開発に対して否定的である。新しい形の旧38条の仕組みの検討や、行政が後押しするような姿勢をお願いしたい。
・耐火性能評価の中に、スプリンクラーの要素を入れてほしい。(アメリカでは15分の緩和規定 がある。)
・耐火性能評価の中に、防火塗料の要素を入れてほしい。
・現状法令では、3階部分を教室とする場合は、耐火建築物が求められる。一方、主要構造部の 耐火性能(耐火構造)については、大臣が定めたものがないことから、大臣が認めたものとして国土交通大臣認定を取得する必要があるが、実際には、建設会社各社が大臣認定を取得することは困難である。例えば、告示仕様として木造耐火構造が規定されることが望まれる。また、更に多くの木造耐火構造の大臣認定の取得に向け、一定の構造方法については包括的な大臣認定として、認定される評価方法・認定方法が整備されるべきである
・なお、旧38条認定の復活は、業界全体として大歓迎と考えます  
 
★進んでいる検討・プロジェクトなどの最新の情報
 【今村幹事】
・22年度の林野庁補助事業で、日本木材防腐工業組合が外壁に木材を使った場合の試験を実施して成果を示しているが、これらのデータを活用して基準を整備して欲しい。 

 
 Ⅲ) 耐久性・維持管理
 (1)木造では決して避けられない腐朽・蟻害の防御方法を真剣に検討し長寿命化を目指すべきである。
 (2)長寿命化を実現するには、「長持ちさせるに値する建物」を作ることが大切である。
 (3)新築も既存問わず、建物への考え方を大きく切り替え、メンテナンスの仕組みを明確に示し、それらを実施する方策を考える必要がある。
 (4)大規模木造建築物に地元の大工が参加することで、地域住民からの愛着と共にメンテナンスへの意識が醸成され、技術が住宅へも広がっていくのではないか。

★中大規模木造建築物の推進に関する課題や推進方策に関する意見
【今村幹事】
・作るときのことだけでなく、できた後の維持管理をどうするのかについて、設計者、施工者のみならず建物管理者も考える必要がある。特に公共建築物の場合、単年度予算制度のままでは計画的な予防保全は不可能である。維持管理基金の創設など、年度をまたいで使用可能な予算措置を講ずるなどの改善が必要であろう。
・設計・施工・材料と維持管理の4つの観点からみた耐久性確保が重要であるが、維持管理については点検しやすい、修理・交換しやすい構造と材料が大切である。特に、中大規模木造建築物は戸建て住宅に比べて大型の構造物となるため、維持管理方法も大がかりになる。メンテナンスが困難な部位の部材(柱、梁等、構造用材、等)は、高耐久性木材(保存処理木材を)使用することも考慮する必要があるように思われる。いかに効率よく維持管理ができるか、いかに正確かつ詳細に劣化診断ができるかが鍵となるため、手法や運営・実施体制の整備が必須である。
・中大規模木造建築物と戸建て住宅では、構造やマクロ的・ミクロ的な環境が異なると考えられる。戸建て住宅とは異なることが想定される、中大規模木造建築物の腐朽の原因や腐朽箇所の抽出、およびその対策について整理する必要がある。・維持管理に関する技術課題としては、屋外使用する木質材料の干割れ防止策の検討、接合金物・接合具の防錆基準の整備、加圧処理材の加工部分の現場処理方法の検討、木材とコンクリートあるいは金属など、異種材料界面における劣化・不具合発生防止策の検討などがあげられる。
・公共建築物などでは、木材を屋外の雨水に曝され易い箇所で使用する場合にはJASのK4の処理が必要とされているが、樹種によってはK4処理が困難である。インサイジングの高度化などにより、確実にK4処理をする技術を開発しておく必要がある。
・集成材や合板・LVLのJASに保存処理の基準がないため、使用箇所が制限されてしまう問題が生じるおそれがある。また、クロスラミナパネルに関する研究がおこなわれているが、保存関係が後回しになっているため、こちらについても使用箇所が制限される懸念がある。早急に、集成材等の保存処理のJAS基準を作成すると共に、CLPの保存処理法についても検討を始める必要がある。
 
【中村幹事】
・木造の腐朽・蟻害については、木の性質を知らない設計者が多いことが最も大きな課題である。水平の部材の中央部に水が乗るようにデザインされている建物や、庇のない建物などは論外だが、水がかかっても、すぐに乾燥するような状態をつくるデザイン的な工夫は設計上の基本であり、この知識をしっかり会得するような体験的教育方法も必要となるだろう。
 
【藤澤幹事】
・劣化部分の点検、診断、修復、更新等に関わる技術、技能の見直しとそれらを確認できる人材の育成が必要。
・外壁等に使用する木材の雨がかり対策―庇や水切り、板材に対する保護策(メンテナンスフリーが可能な樹種、板厚、構工法の検討)などの情報整理が必要。
 
【矢野幹事(代理:熊木住協専務)】
・地元の工務店が、何らかの形で関わることや、保守管理等を担当することは、大切と考える。
 
【岸幹事】
・木材は他の材料に比べて腐朽、蟻害、表面劣化という点で維持管理の取り扱いが難しい材料であり、品質性能を維持するための維持管理コストをどれだけ許容できるかにより使用を選択すべきものである。従って保存のために加工された木材を含め、判断に資する情報を設計者等建築関係者に詳細に提供し、建築物を劣化させない利用を促すことが求められる。木材をふんだんに使えばいいという風潮は、将来木材離れにつながる。 

★進んでいる検討・プロジェクトなどの最新の情報
 
【今村幹事】
・国土交通省のH22,23年度事業で、シロアリの生息範囲のアップデート、薬剤自体の効力持続性の調査、腐朽・蟻害の程度と強度低下との関係、薬剤と防錆処理との関係、等の検討をおこなっている。・国交省主導による中古住宅の流通、長寿命化、維持管理関連の研究プロジェクト。・「集成材建築物(おもに中規模建築物を想定)設計の手引き」が、H23年度末に日集協から出版された。この中で、耐久設計について1章を設け、現段階での主要知見が整理されている。
 
 
 Ⅳ) 省エネルギー
 (1)木質断熱材・木質仕上げ等の調湿を含む各種室内環境性能を意識した木造建築づくりと普及啓発が必要である。
 (2)再生可能で自立した資源である木材を活用した木造建築は、自立型の都市・建築づくりが可能であり、その環境基本性能を評価し法制化する努力が必要である。

★中大規模木造建築物の推進に関する課題や推進方策に関する意見
【中村幹事】
・①について:平成11年次世代省エネ基準ではQ値計算で4地域で2.7以下の性能が要求される。この性能を現在、基準法に組み込む法規制化が検討されている。この性能を満足するには、木質材料だけで断熱性能を満足するには極端に厚い部材を必要とするため、ログハウスのように材積が多くなり、コスト高に跳ね返ってくる。
木質材料の断熱性能を良く知った上で材料の複合性能を考えることが必要である。そして、木質材料と相性の良い断熱材を適度に利用することが必要となる。
もう一つ難しいのが在来木構造住宅の性能基準をどう考えるかという課題である。在来木構造住宅では、Q値が4程度にしかできない。これを相当隙間面積C値も含めてどう基準作りをするべきかを研究しなければならない。JIA環境行動ラボでは現在、建築研究所の澤地先生らと具体的な研究を始めている。
・②について:木造都市が2050年の低炭素社会をつくる手法として大きな力を発揮する。これを具体化し、促進するための規制緩和、大胆な誘導政策が求められている。具体的には、一般施設の木造建築による8階までの緩和、防火コアなど性能設計法の開発、不燃技術の進化とコスト削減などの技術開発が必要となる。
 
【藤澤幹事】
・木質材料単独ではなく、複合的な省エネ対策も必要だと考えられる。
 
【矢野幹事(代理:熊木住協専務)】
・工務店、地域ビルダーが参考とできる具体の省エネ仕様(充填工法、外張り工法等)の例示(仕 様規定として採用すれば省エネ基準は満足等)を充実させるべきである。
 

 Ⅴ) 防音・遮音
★中大規模木造建築物の推進に関する課題や推進方策に関する意見
中村幹事】
・木造都市を実現するには、壁、床における防音、遮音技術が欠かせない。これも木造の性質上デメリットであるため、ALCなどの軽量コンクリート材料を利用することになる。ALC材料は製造時のCO2排出量が高いという課題があり、これに替わる材料の開発が必要となる。
 
【藤澤幹事】
・木質材料の特質を活かせる複合的な構工法の検討が必要
 
【矢野幹事(代理:熊木住協専務)】
・工務店、地域ビルダーが参考とできる具体の遮音性に関する仕様規定の提示(例示)が必要で あると考えます。特に、中大規模木造床(スパン8m等)の遮音性能の確保、床振動対策等の具体の仕様が必要と考えます。
 
 
Ⅵ) 調達・流通
 (1)製材所の大型化は必要だが、地域のニーズに合わせた製品をつくる工場も育てる必要がある。
 (2)木造建築においては、コスト削減や責任の明確化のために、木工事部分の分離発注が有効との意見がある。メリット・デメリット両面から具体的な検討をする必要がある。
 (3)木造建築の場合、木材の乾燥工程が必要で、年度会計と木材調達の関係が問題となりやすく、既に示されている解決策等を提示する、新しい仕組みを構築する等の必要がある。
 (4)複雑な流通機構のために木材価格が高くなるという意見もあり、それに対する整備が必要である。
 (5)国産材の安定供給については、県産材の枠を超えた地域連携も必要である。
 (6)木材業界側が建築側の実情を理解し、そこで求められる木材品質の情報をフィードバックする必要がある。
 (7)川下、川上の真の連携を構築し、川上は原木の安定供給を確保する体制を真剣に検討し、川下は製材品にならない品質の原木の利用の拡大に協力する等、循環型社会構築のための方策を検討する必要がある。
 (8)性能だけでなく、持続可能性の面などからも、原産地表示等の表示が必要である。

★中大規模木造建築物の推進に関する課題や推進方策に関する意見
【中村幹事】
・⑤について:国産材の安定供給については、県の枠を超えた地域連携も必要である。
県産材の少ない県も実際の流通には隣県の材料を使うことが多い。九州地方の熊本、鹿児島材は県だけではさばききれず、また長崎県では木材が不足している。県単位ではなく、地方単位で安定供給も目指した制度設計が必要である。これには地域の政治家の地域エゴが大きく、政治家同士の連携が課題となっている。
 
【藤澤幹事】
・安定的な品質、供給、価格を維持させるには小規模な需要と供給を可能にする地域間連携が必要。そのための情報、機能の連携体制の構築も必要。
 
【矢野幹事(代理:熊木住協専務)】
・住宅用部材として構造用集成材の在庫管理等はなされているが、一方で、中大規模の木造建築物のような一品生産物件にあっては、設計の確定から資材(大断面集成材等)の発注までの期間がタイトであり、資材の入手も困難と推測される。例えば、複数の集成材メーカーが現状のストック状況や生産計画等を共有でき、必要な資材の確保が容易となる体制整備が必要である。個別の設計確定から資材調達(入手)まで6カ月以上を要していては、工事にならない。
・過去に、大きいプロジェクトが発表になっただけで、集成材の価格が2倍から3倍になったケースがあった。
 
【岸幹事】
・木造建築物を建てる際に最低限必要なことは、必要な時に必要な性能を有する材料が必要な量確保できることであり、基本は木材流通業がその任を担うべきものである。地産地消は地域振興の要であるが、それに拘る余り、必要な材料調達への支障を生むのであれば、木造建築の質や林産業の発展にはマイナスとなりかねない。そういう意味では、分離発注は特別の仕様の材料調達には有効な場合もあるが、市場調達が可能な一般材まで行わなくともよいのではないか。むしろ地域材が、地域の需要に拘り過ぎず、全国ブランドを目指して、品質の向上、性能の表示、在庫情報の充実、用途の開発などに取り組むことが結果として木造建築物と林産業の発展につながるのではないか。 

   
 Ⅶ) 木材の品質
 (1)性能だけでなく、持続可能性の面などからも、原産地表示等の表示が必要である。
 (2)国産材の安定供給については、県産材の枠を超えた地域連携も必要である。
 (3)使う側の立場に立った国産材の性能データベース整備が重要である。
 (4)クレームに対処できるデータの充実が望まれる。

★中大規模木造建築物の推進に関する課題や推進方策に関する意見
【今村幹事】
・国産材の性能についてのデータベース整備が重要であるが、個別的に、地域毎に、分野毎にデータ収集を行うのではなく、大型の予算措置を行い、国がリーダーシップを取って統一的に行うべきである。耐朽性など従来から未整備のものはもちろんであるが、バラツキのあるものを一定のグループ化できるのか、実際の利用者の眼で検討が必要である。
 
【藤澤幹事】
・トレーサビリティ体制の構築が必要。
 
【岸幹事】
・建築物に使える材料は基準法37条の規定により、JAS又はJIS規格品あるいは大臣認定されたものであるが、双方とも技術開発の成果、あるいはCLTのような従来の技術的枠組みを超える技術を早期に適用するためには難があり、そのことがひいては木造技術発展の停滞につながるおそれがある。このため、たとえば、米国やドイツなどと同様、ISOなどの国際規格等をベースに第三者機関などの民間機関が、一定のピアチェックを経て新規格を制定し認証するといった柔軟な仕組みで解決するといったことは考えられないか。 

★進んでいる検討・プロジェクトなどの最新の情報
【中村幹事】
・現在、桐材の利用を実践している。桐は早く生育し、その耐火性能、断熱性能は非常に高い。構造材としても杉材よりやや劣るが同程度であり、将来の木造都市にはなくてはならないものと考えている。
・木材市場では桐を高級家具材としか見ていないため、高価で、少量しか入手できない。アメリカ、中国では桐材の集成材が進んでいる。アメリカでは6年で生育する早生桐が開発されていて、東北の被災地でも桐で再生を図ろうとする動きも生まれている。
・桐や竹材を利用したり、バイオマスエネルギーとして利用することは非常に効果があると考えている。


 Ⅷ) 技術者の育成
 (1)建築士、工務店、材木屋等が、それぞれの立場で知っておく必要のある基本的な木造および木材の知識が欠如していることが根本的な問題である。
 (2)木材業界側が建築側の実情を理解し、そこで求められる木材品質の情報をフィードバックする必要がある。
 (3)人材育成と一言でいっても、様々な立場に対する方策が必要で、具体的方策(育成基金、各種教育機関のあり方)を検討する必要がある。
 (4)実際のプロジェクトで人材を育成することが現実的であり、公共建築物においては、それが実現可能なのではないか。
 (5)大工、職人の育成には経済面と社会的地位の向上が不可欠であり、具体的方策の検討が必要である。
 (6)資格や人材育成プログラムを受講した後の能力向上とその評価の仕組みが必要である。
 (7)現状の資格制度(各種建築士)の中で、木造に対する能力を向上させる仕組みを再構築する必要がある。

★中大規模木造建築物の推進に関する課題や推進方策に関する意見
【中村幹事】
・人材育成というと、大工や伝統的流通を前提とした人材を考えることが多い。ものつくり大学や岐阜県立森林アカデミーなどでは伝統技術の継承が真っ先に必要な人材育成であるが、一方では新しい木造技術の開発、新しい木質材料の開発などは最先端の建築家によることが多く、旧38条の復活も踏まえ、広い範囲で人材を考えることが必要である。
 
【藤澤幹事】
・中大規模の建設現場では、グループ作業が必然。そのための体制として技能人材の組織化が課題。その前提として、一定水準の能力に達するための育成訓練のシステム、評価システム、それに対応した処遇のシステムの整備が産業レベルで行えるかが課題である。
 
【岸幹事】
・木造建築物、とりわけ中高層になると、これまで木造を取り扱ったことのない設計者や施工者が参入してくることとなるが、木造は、構造設計、耐久性・維持管理、防耐火、材料調達、木材の品質の選択などで独特のところがあると思う。このため、そうした新規参入者が参入しやすい環境づくりが求められるところである。例えば、工法の標準化、詳細な情報の提供、求める材料の入手のしやすさ、材料品質の信頼性の向上などである。

 
 Ⅸ) 発注
 
(1)地域の木造建築に、地域設計者・施工者が関われる環境の推進をはかるべきである。
 (2)地域の木造建築は、地元のゼネコン、工務店、職人の良い関係をつくる可能性がある。また、地元の人々に見てもらうことで、ユーザーとつくり手の関係づくりが必要である。
 (3)実際のプロジェクトで人材を育成することが現実的であり、公共建築物においては、それが実現可能なのではないか。特に、地元に技術を根付かせることができる。
 (4)木造建築においては、コスト削減や責任の明確化のために、木工事部分の分離発注が有効との意見がある。メリット・デメリット両面から具体的な検討をする必要がある。
 (5)木材の質について発注者、納入者の意思疎通が明確にできる仕様書等が必要である。
 (6)木造建築の場合、木材の乾燥工程が必要で、年度会計と木材調達の関係が問題となりやすく、既に示されている解決策等を提示する、新しい仕組みを構築する必要がある。

★中大規模木造建築物の推進に関する課題や推進方策に関する意見
【中村幹事】
・①について:実際のプロジェクトで人材を育成することが現実的であり、公共建築物においては、それが実現可能なのではないか。特に、地元に技術を根付かせることができる。
現在行っている専門家派遣は単発であり、効果には限界がある。もっと中に入り込むようなプロジェクトへのコンサルタント派遣が必要だと思う。企画の段階から自治体への指導、具体的な設計の監修など、長期的な連続的な監修があって初めて人材育成の効果も期待できよう。
 
【藤澤幹事】
・公共工事的な扱いとするならば、独自に公共工事設計労務単価(基準額)の見直しをするとともに、良質の建物を実現するための積算基準、適正な最低賃金の設定など示すことができるかが
最大の課題である。


 Ⅹ) コスト
 (1)実際のプロジェクトで人材を育成することが現実的であり、公共建築物においては、それが実現可能なのではないか。特に、地元に技術を根付かせることができる。
 (2)建築工事全般について言えるが、積算の根拠を明快にするべく、材料、工賃の双方において構成内容を明らかにする必要がある。木造については、木工事部分の分離発注が手法の一つと考えられる。
 (3)設計者は、木材の川上から川下に至る実情を理解して、総合的に無理のない設計がコスト縮減に寄与することを理解し、積算能力も高める必要がある。
 (4)コスト管理には、一般に流通されている市場流通部品・部材の活用が有効である。

★中大規模木造建築物の推進に関する課題や推進方策に関する意見
【中村幹事】
・コストに関しては、木材業界の旧態依然たる大名商売の名残りがある。これを払しょくするための努力が業界の内外に求められる。何もせずに売れた時代から、新しい時代に社会が何を必要とし、木材業界がそれにどのように応えるかが課題である。
・木造だから高いというコスト評価を受けるのは社会的に認められない。木造でもRCと同程度のコストで設計・施工することによって、社会から木造の良さを認められる。そのためには、徹底したコスト管理を行うこと。流通の多くを合理化し、安い材料を提供すること。それを上手に美しく見せる技術が設計に求められている。
・間伐材などの端材をうまく利用すること。チップ材などの加工品でも高級感のある材料に復活することも可能である。昔から木目の美しさという言い方は、建材の偶然な価値を美化するものであり、これが現在も通るとは思えない。むしろ、丸太の美しさといった方が、木の方からいえば自分の美しい姿といえるのではないか。それが間伐材でも。
・計画植林の在り方もその点を考えて計画するべきだと思う。
 
【藤澤幹事】
・積算の根拠を明確にするとともに、それが維持、遵守されているかの監視システム、ペナルティの制度化が課題である。
 
【岸幹事】
・木質構造の建築物の民間での普及のためには、鉄骨造やRC造とコスト面で少なくとも同等であることが不可欠であるが、木造はかかり増しとなると言う声が多い。このため、先駆的な取り組みに加え、最も汎用的な用途・規模の建築物で、工法、施工、材料等の分野でのコスト削減を意識した仕様の形成(標準化)を促進していくべきではないか。この際、RC等との混構造建築や、ハイブリット的発想の工法も選択肢としてあってもよい。

 
ⅩⅠ) ニーズ 
 (1)公共建築物においては、今後の需要が統計上明確なものがあるので、目標を定め、それらを計画的に木造とする方策が必要である。

★中大規模木造建築物の推進に関する課題や推進方策に関する意見
【今村幹事】
・木造だから良いということを裏付ける科学的データの収集(感性評価,医学的な実証など)も木材を使ってもらうための重要な説得材料になると考えられ、この分野の研究が益々必要になると思われる。
・内装での木の使い方についてもっと検討すべきでは。

 【藤澤幹事】
・事例に基づく、効果、貢献をアピールすることだが、LCCM的な評価も含めて、市民および議会への説得力のある資料の整備が必要。
 

ⅩⅡ) 地域環境
 (1)木造住宅、木造建築を地域文化の象徴として捉えて、その推進をはかる必要がある。
 (2)低炭素社会の実現に向けては、都市・社会における木材の役割は大きい。未来における木造のあり方を考える必要がある。
 (3)自立型の都市・建築の構築に、木材を中心にすえた自立循環を推進するための具体的な方策を検討する必要がある。
 (4)地域で入手できる建材を使いながらも、現在の要求性能を満たす新しい建築工法の確立を目指す必要がある。

★中大規模木造建築物の推進に関する課題や推進方策に関する意見
【今村幹事】
・画一的な建築物として考えるのではなく、それぞれの街の景観や歴史に適合した構造、デザインを設定し、長期的な街づくりの観点から考えて行くべきであろう。
 
【中村幹事】
・2050年低炭素社会の実現のためには、木造都市を一つのモデルとしたい。その実現のために、政策、制度の特区による小都市における公共建築、民間集合住宅などの木造化を2020年までに実現することが必要である。
 
【藤澤幹事】
・事例に基づく、効果、貢献をアピールすることだが、LCCM的な評価も含めて、市民および議会への説得力のある資料の整備が必要。 

 
★進んでいる検討・プロジェクトなどの最新の情報
【中村幹事】
・具体的な都市はまだないが、北九州市城野地区、近江八幡市、長久手町などが候補となろう。